festival
♪♪♪♪♪♪
掃除は苦悩していた。
空也から聞かされた「犯罪ワールドカップ」の噂も気にはなっていたが、彼を悩ましているのはもっと現実的なことである。
ここ数カ月、JDCに所属する探偵たちの不祥事が相次いでいるのである。
犬を金属バットで殴り殺してインスピレーションを得る「撲殺探偵」が、動物愛護協会から抗議を受けていた。
女性の体を触ってインスピレーションを得る「セクハラ探偵」が、JDCの女性職員から告訴されていた。
手術中にインスピレーションを得る「開腹探偵」が、健康な人間を手術したとして傷害罪に問われていた。
天皇を賛美してインスピレーションを得る「右翼探偵」と天皇を罵倒してインスピレーションを得る「左翼探偵」が、河原町の路上で刃物まで持ち出しての大喧嘩をやらかした。
調子に乗って、探偵を増やしすぎたかもしれない……掃除は後悔していた。
いくら推理に秀でていたからといって、犯罪者やその予備群をJDCに入れるべきではなかった。……いや、犯罪者だからこそ犯罪者の心理が読めるのか? すると、すべての探偵は犯罪者の素養を持っている、ということになる。
掃除は頭を振ってその不毛な考えを追い払った。もっと前向きなことを考えねば。
そうだな、今度はこたつにあたってインスピレーションを得る「こたつ探偵」などはどうだろう? のんびりしていて、なかなかいいぞ。
突然、轟音と震動が掃除を襲った。執務室の壁に亀裂が走る。
JDC本部ビルが爆破されたのだ。
崩れ落ちる瓦礫の中で、掃除は考えていた。
……はて? 「爆弾探偵」なんて奴がいたっけ?
★Next Page★