festival
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由比賀独損はうすら笑いを浮かべていた。
犯罪ワールドカップが開幕してから早くも三日。犠牲者は一万人に達しようとしていた。パニックはすでに世界中に広がっている。
しかしまだこれは一次予選に過ぎない。このあと、さらに恐ろしい二次予選が待っているのだ。
JDCの精鋭たちは心血を注いで推理を続けているが、いまだに解決の糸口さえつかめない。
チャンスである。
この事件をおれが解決できれば、一気に第一班入りも夢ではない。
いや、おれにしか解決できないだろう。
独損の手元には、古ぼけた本があった。犯罪ワールドカップ解決の鍵を握る本だ。
この本に気付いているのは、彼だけだった。
彼はもう一度、その本を読み返していた。
『いよいよはじめやがった』『世の中が変わる』『平和日本はおしまいだ。新しい時代の幕あきだ!』『恐怖と狂気と! 戦慄の時代がはじまる!』『おどらされるぞ』『おどらされるぞ日本人全部が』『おどらされる悪魔の笛に』『悪魔の太鼓に!』『狂気のおどりを』『死のおどりを』『人間の未来をこわす! 地獄のおどりだ』
そう、この本こそが、二十年前に事件を予言して書かれた、永井豪の『デビルマン』だ。
この本さえあれば、事件はすでに解決したも同然である。「探偵神」の称号は、おれがいただく。
独損は笑い続けていた。
……いや、待てよ、一応永井豪の他の作品もチェックしておく必要があるな。
独損は『けっこう仮面』を手に取ると読み始めた。
「おっ、す、すごい! うーむ、これはなかなか……。ふ、ふ、ぐふふふふ……」
独損は笑い続ける。
事件が解決するのは、もう少し先のようだった。
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