「と、言う訳で今回の任務だが...」
「わ、私、もうテレパスとか、テレポーターとかは嫌です。」
「何故だね、紙麻君?」
「だ、だって、変質者だとか、ち、痴女呼ばわりされて...このままじゃ祖師名さんに嫌われちゃう。そうなったら、部長、責任とってくださるんですか、え、どうなんです!」
「く、首を絞めるのは、止めたまえ、紙麻君!」
「はぁ、はぁ、すいません、つい興奮してしまいました。」
「安心したまえ、今回のターゲットは、君もなじみのサイキッカー、テレキネシス能力者だよ。ゲルショッカーではないからそのつもりで。」
「なんです?それ。」
「...気にしないように。ターゲットはテレキネシス能力をつかって鍵を空け、盗みを繰り返しているらしい。最近は調子にのって、「怪盗テレキ」などと名乗り、予告状まで送ってくる始末だ。」
「ずいぶん安易なネーミングですね。」
「私もそう思う。疲れてきたんだろう。」
「え、誰がですか?」
「...出撃、紙麻君!」
「10・10(テン・テン)!」
「君、本当は何歳なんだ?」

 ここは、とある大富豪の屋敷の前。
 明日の夜12時に、この家の家宝を盗みにくると、予告状の届いた家である。犯人が逮捕されてしまっては、なにかと手続きが面倒なので、できれば犯行前に補導したい。
 今回、次子には勝算があった。
 なにしろ、犯行現場も時間も特定されているのだ。“サツジンキ”を使って、明日の12時を“未来予知”すればよい。犯人の人相が解れば、補導もたやすい。
「次子はがんばります。祖師名さん、見守っていてくださいね。」
 遠くを見つめてつぶやく次子だった。

“サツジンキ”をかざして精神を集中する。やがて、脳裏に犯行現場の様子がくっきりと浮かんできた。
 誰もいない部屋の窓の鍵がひとりでにはずれる。犯人がサイコキネシスで外したのだ。そしてゆっくり窓が開かれ、犯人が部屋に忍び込み...。

 もちろん、次子はベソをかきながら、祖師名の部屋のドアを叩くことになる。改めて述べる必要も無いと思うが、犯人は、顔全てが隠れる覆面をしていたので、人相どころか性別すら解らなかったのである。

 ...ファイトだ、紙麻次子。





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