笑えない工学者
阿東
某県立T大学工学部研究棟の一室で、悲鳴があがった。
もちろん、出したのは東之園萎絵である。
「せ、先生っ」
その萎絵の側でうずくまっている彼こそが、この部屋の持ち主、浅野川助教授であった。浅野川は今、腹部を抱えて顔をしかめていた。
「だ、大丈……夫……」
「もう、先生ったらうそばっかり。嘘つきは泥棒の始まりなんですよ……って、今はそんなこと言ってる場合じゃ……あ−ん、先生−っ」
「どうでもいいけど、救急車を呼んでくれないかな……」
どうでも良くないような気はするが、とりあえず、萎絵にそう声をかけ、浅野川は溜め息をついた。
(今日の溜め息数、18回……)
まだまだ大丈夫なようである。
「盲腸ですね」
結局、隣の部屋にいた美波助教授の呼んだ救急車で、浅野川は病院に運ばれた。そこの医者にあっさりとそういわれ、浅野川は思う。
(明日から、毎日現れるであろう東之園君のお笑い攻撃に、耐えられるだろうか……)
そして今日19回目の溜め息をついた。
(この物語は以下略)
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