大阪おふみ2次会殺人事件・究極の解決編

うえだたみお

 私は、まるは研究室のドアを閉めると、エレベータホールへ向かって廊下を歩き出した。角を曲がると、薄暗がりの中、壁にもたれ腕を組んで一人の女性が立っていた。ゆーりである。
「どう、うえださん? まるはさんは、うまくだまされてくれた?」
「ええ、ちょろいもんですよ。あんなずさんな推理を簡単に信じてしまうんですからね。もう少し頭のいい人なら、だまし甲斐もあるんですが」
 ゆーりが婉然と微笑む。
「贅沢は言わないの。おかげで、私の殺人がばれずにすんだんだから」
「そう……ですね。でも、ゆーりさん、やっぱり殺すほどのことはなかったのでは……」
「そんなことない!」
 ゆーりの口調がきつくなった。
「あの女……うりうり……よりにもよって、私の愛するトーマくんとウミウシなんかを同列に扱うなんて! 死んで当然のことをしたのよ、あいつは!」
「なるほど……そうですか。ところでゆーりさん、ひとつ聞きたいことがあるんですが」
「なに?」
「生きているトーマくんと撲殺されたトーマくんと、どっちが好きですか?」
「う〜ん、それは……」
「なんか、うりうりと大して変わらないみたいですね」
 ゆーりの瞳が妖しく光った。
「……いや、冗談ですよ、冗談。さて、私はこれで退散します」
 私は、ゆーりに背を向けてエレベータのボタンを押した。後ろからゆーりの声がする。
「うえださん」
 私は振り返った。
「名古屋でも……よろしく、ね」
 ゆーりが微笑みながら右手を差し出す。私は、少しためらったがゆーりの手を握った。……手のひらに、針で刺したような痛みが走る。
「ゆーりさん……まさか……」
 私は右手を押さえてうずくまる。ゆーりの指にはめられた指輪から、一本の針が突き出ているのが見えた。右手はしびれ、感覚がなくなってくる。
「共犯者は始末するのが鉄則でしょ?」
「そ、そんな……」
 よく見ると、ゆーりは背中に金属バットを隠し持っていた。……それを使わずに、なぜ、毒なんかで?
「ああ、これ?」
 私の問いかけるような視線に気付き、ゆーりが金属バットを掲げる。薄れゆく意識の中で、ゆーりの答えが遠く聞こえた。
「これは、トーマくんに会ったときのためのもの。誰が、あなたなんかに使うもんですか」




(合掌)
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