大阪おふみ2次会殺人事件・問題編

うえだたみお

 つい先刻までにぎやかにしゃべっていた彼女は、いまや一個の「物体」と化していた。
 もともと大きな目をさらに大きく見開き、口からはわずかに血が流れている。テーブルの上に突っ伏した彼女は、もはや微動だにしない。
 死んだのは、うりうりである。この殺人事件は、大阪おふみの2次会の会場、炉端焼き屋の一角で起こった。

 私は、しばらく茫然自失としていたが、すぐに気を取り直した。このメンバーの中でホームズ役を務められるのは、私しかいない。さっそく、となりに座っていたまるはに声をかけた。
「どうやら毒殺のようだが、死因は何だろう? さっそく検死したまえ、ワトソンくん」
「あの、ワトソンじゃなくてまるはなんですけど……」
「何を言っている。医者で、しかも読者よりわずかに頭が悪い。ワトソンに最適じゃないか。文句を言わずに自分の役割を果たせばいいのだ」
「とほほー」
 文句を言いつつも、まるはワトソンは検死をおこなった。
「死因は、急性ニコチン中毒。右の手のひらに、針で刺したような傷がいくつかあります。おそらく、毒はここから入ったのでしょう。『凶器』はまだ見つかっていませんが……」
「いや、凶器はここにある」
 私はテーブルの下を指さした。そこには、ウニが転がっていた。
「犯人は、このウニの針に毒を塗っていたのだろう。普通の人間ならわざわざウニに触ろうなどとは思わないはずだが、被害者はうりうりだ。『きゃー、かわいいウニさん! このチクチクがたまらないのよね♪』とか言いながら思わず手を伸ばしてしまったのだろう。被害者の特殊心理を利用した、実に巧妙なトリックだ」
「でも、このトリックってなんだか盗作くさいんですけど……」
「ええい! そんなもの、黙ってりゃわかりゃせんのに!」

 私は、まるはワトソンを助手にさらに捜査を続けた。
 その結果、凶器として使われたウニは炉端焼き屋で材料として仕入れたものであること、ニコチン毒は前の客がたまたま忘れていったものであること(ご丁寧に『ニコチン毒』とビンに書いてあった!)が判明した。つまり、その場にいたものすべてに犯行の機会があった、ということだ。
 私の必死の努力にもかかわらず、犯人を特定することができないまま数日が過ぎた。

 そしてその日、私はまるはワトソンの研究室を訪問していた。
「あのー、うえだホームズさま、まだ犯人はわからないんですか?」
「はじめは五里霧中だったがね、ワトソンくん、この数日の会議室の発言を読んで、ようやくわかってきたよ」
「え? ホントですか? 僕にはさっぱりわからないんですけど」
「まあ、君の頭脳では無理もないかもしれないが、よく考えてみたまえ。『その犯行によってもっとも利益を得るものが犯人だ』とゲーテも言っているだろう」
「……ぶつぶつ。ゲーテって、そんなこと言ってたかなあ……」



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