浅野川少年の事件簿
♪♪♪
浅野川の部屋。ベッドに座った美波は、煙草に火をつける。
浅野川「おふくろに見つからないようにしろよ」
美波「ああ。で、何がわかったんだ? とっとと教えろよ」
浅野川「これは、あくまでも想像なんだが……。あの二人は、やはり、別々に自殺したんだ」
美波「いや、でも……」
浅野川「男の方は、最上階か、一階下か、その辺の窓から飛び降りたんだろうな。女と、ほとんど同時に」
美波「じゃあ、手をつないで死んでいたのは……」
絶望し、窓から飛び降りた男。自分の体が風を切る音が耳に響く。
ふと横を見ると、そこに女がいた。目と目があう。
その瞬間、男は恋に落ちていた。
……この人となら、人生をやり直せるかもしれない……
男は手を伸ばす。女の手が伸びてくる。女の目も、同じことを語っていた。
二人は手をつなぐ。しっかりと。
しかし、二人に残された人生は、あまりに短かかった。
わずか数秒間の恋人同志。
美波「なるほどねえ。愛に時間は関係ない、ってことか」
浅野川「がらにもないことを言うなあ」
美波「ははっ、まあ、たまにはね」
浅野川「……おい、煙草一本くれないか?」
美波「いいけど……お前、いつから煙草吸い始めたんだ?」
火をつけながら浅野川が答える。
浅野川「今から、さ」
★Go Back★