五枚のとんかつ

うえだたみお


「ああ、困った困った」
「どうしたんだ早乙女、また難事件か?」
「ええ、そうなんですよ先輩。殺人事件なんですが、どうしても謎が解けなくて……」
「どんな事件なんだ? よかったら話してみろよ」
「はあ、でも、先輩に解決できるかどうか……」
「いいから話せって!」
「……はい。ええと、ある中小企業の社長が殺されたんですよ。その社長には二億円の生命保険がかけられていて、息子たち五人がその保険金の受取人になっています。当然、容疑はその息子たちにかかっているわけですが、鉄壁のアリバイがありまして……」
「なるほど」
「事件が起きたのは一月十三日の夜です。息子たち五人は山奥の村の別荘で過ごしていて、父親の方はそこからスノーモービルで三十分ほどかかる村のペンションに泊まっていました」
「ちょっと待て。念のために聞くが、それは日本での事件だろうな?」
「え? もちろん、北海道だから日本ですよ。ほら、ここに地図もあります」
「うーむ、ひょっとしてこれは、南極大陸の地図ってことは……」
「誰も間違えませんよ、そんなもの」
「そうか。わかった、先を続けてくれ」
「で、事件が起きた夜は激しい雪のため、息子たちのいる別荘と父親のいるペンションの間の交通手段はスノーモービルしかありませんでした」
「ちょっと待て。念のために聞くが……」
「もちろん、地下鉄も通ってません!」
「そうか。わかった、先を続けてくれ」
「息子たちのうち一人は別荘に残り、残りの四人はスノーモービルに乗って父親のいるペンションに向かいました。一人が残ったのは、スノーモービルが四台しかなかったためです。四人がペンションのロビーに着いたとき、父親の部屋から悲鳴が聞こえました。四人がフロントマンと一緒に駆け付けてみると、父親が死んでいた、というわけです。死亡直後だったそうです」
「うーむ、なるほど……」
「あっ、やっぱり解けないんですね! あーあ、話して損した」
「こらこら、あわてるなって。今考えているんだから。……そうだ、とんかつだ!」
「とんかつ?」
「とんかつが、この事件の謎を解く鍵なんだ。おい、五枚のとんかつをどうやったら六枚に増やせるか、わかるか?」
「とんかつを増やすんですか? ポケットに入れて叩いてみたらどうでしょう?」
「ビスケットじゃない!! ……ああ、せっかく何か思いつきそうだったのに、忘れてしまったじゃないか」
「まあ、気にしないでください。最初から先輩なんかあてにしていませんから」
「言ってくれるなあ。うーむ、五人の息子か……。あと一人共犯者がいれば、話は簡単なんだがなあ。……おい、そういえば、息子たちの名前はなんていうんだ?」
「名前ですか? えーと、おそ松、チョロ松、トド松……」




(この物語はフィクションであり以下略)
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