第79回   セーラームーンの秘密 1996.12.12


 今日は、セーラームーンの話である。
 いや、知らない人でも大丈夫、わかりやすく解説するから。まあ、だまされたと思って読んでいただきたい。

 セーラームーンは、土曜日の夜7時から放映しているアニメである。現在のタイトルは『セーラースターズ』であるが、『美少女戦士セーラームーン』の方が通りが良いので、以後こちらの名称を使う。
 マニアだと思われるといけないので、念のために言っておく。私はそんなにしばしばセーラームーンを見ているわけではないのだ。せいぜい、週に一度である。

 では、『美少女戦士セーラームーン』とは、どんな話か? だいたい次のようなものである。

 薄暗い部屋の中。ベッドには、一人の少女が横たわっている。
 その枕元に立っているのは、母親らしき女性。そして、いかつい顔をした、袈裟を着た男。
男「いかん、やはり娘さんには悪霊が取り憑いている」
母「ああ、それでは、娘は‥‥」
男「安心しなさい。この私の力を持ってすれば、このような悪霊など‥‥」
 突然、どこかから声が響く。
声「待てい!」
 男、あわてて振り返る。そこには、セーラー服を着た大槻義彦教授が立っている。
大槻「やめろ、織田無道。霊も超能力も、この世に存在しないのだ!」
 織田無道と呼ばれた男、反論する。
織田「なんだと、この私の霊能力を、まやかしだと言うのか!」
大槻「そのとおり。そんな非科学的なことを言う者は‥‥」
 大槻、ポーズを取って叫ぶ。
大槻「月にかわって、おしおきよ!」

 しまった、間違えた。これは、『自称除霊師オーダームーン』だった。
 申し訳ない。今度は、ちゃんと紹介する。

 夜の街。セーラームーンこと月野うさぎと、セーラーマーキュリーこと水野亜美が歩いている。
亜美「遅くなっちゃったわね、うさぎちゃん」
うさぎ「ほーんと。何も、模試の前日にこんなに勉強することないじゃん」
亜美「何言ってるの。模試の前日だから、勉強するんでしょう。それよりうさぎちゃん、明日の朝、ちゃんと起きられる? 5時には起きないと間に合わないわよ。模試の会場、遠いんだから」
うさぎ「うえーっ、早起きは苦手なんだよねー。今日は早く寝よっと」
 二人の前に突然あらわれる巨大な影。
うさぎ「ななな、何?」
 街灯の下へと歩いてくる影。次第に姿がはっきりする。それは、土でできた巨人だった。
 あわてるうさぎ。
うさぎ「あ、亜美ちゃーん、なんか変なのが出てきたよー」
 亜美、落ちついて答える。
亜美「どうやら、ゴーレムのようね」
うさぎ「ゴーレムぅ?」
亜美「そう、土で人形を作って、それに魔法をかけるの。そうすれば、主人の命令に忠実に従うロボットになるのよ」
うさぎ「さーすが亜美ちゃん、物知りーっ! って、感心してる場合じゃないか」
 うさぎ、ゴーレムの方を向いて言う。
うさぎ「ゴーレムだかなんだか知らないけど、明日は模試なんだからねっ! 邪魔しないでよ!」
 ゴーレム、どんどん近づいてくる。
 よく見ると、手には女性週刊誌のようなものを持っている。
うさぎ「‥‥言っとくけど、『微笑女性誌ゴーレームーン』なんてオチじゃ承知しないからねっ!」
 うろたえて週刊誌を落とすゴーレム。
 そのすきに、うさぎ、セーラームーンに変身する。
うさぎ「まあったく、よりによって模試の前日に戦わなきゃならないなんて」
 うさぎ、ポーズを取って叫ぶ。
うさぎ「家に帰って、5時起きよ!」

 ‥‥とまあ、このような話である。おわかりいただけただろうか。

 しかし、このように文章で説明しても、なかなかセーラームーンの良さはわかってもらえないだろう。実際に見ていただくのが一番なのだが、土曜日まで待てない、という人は、私のところまで電話をかけてもらえれば、特別サービスで説明しよう。
 ただし、今夜は都合が悪い。明日の朝起きてから、私の携帯電話にかけてほしい。なぜかというと、『起床後奉仕セルラーホーン』だからだ。


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