第123回   最後の手段 1997.3.16


 困った。実を言うと、ダジャレのネタが尽きてしまったのだ。
 『古今東西ダジャレ年鑑1997年度版』をひもといてみても、使えそうなものは載っていない。そこで、最後の手段を取ることにした。最後の手段といえば、もちろん、悪魔を召喚することである。以前にも召喚したことがあるが、これで3回目である。
 しかし、たかがダジャレのために悪魔の力を借りることになるとは‥‥これはやはり、神に対する冒涜だろうか。キリスト御免。
 というわけでその日、私は悪魔召喚の実作業にかかった。

 ‥‥魔法陣は完成した。星宿も月齢も時刻も、最適である。あとは、悪魔を呼び出す呪文を唱えるだけだ。
 私は、一冊の本を手に取った。一見なんの変哲もない本に見えるが、これが魔法の書なのだ。本、実は聖典なり。その本‥‥『ソロモンの真の鎖骨』を開くと、私は一節を読み上げる。
「急ぎ、みな来よ、霊たちよ。汝らの王の魔力によって、汝らの王たちの七つの王冠と鎖によって、地獄の霊はすべて、われが呼ぶときには、この魔法の輪の前に現れねばならぬ。汝らはすべて、われに従い、力の及ぶ限りわが望みをかなえよ。東西南北、四方より来よ。神なる者の機能にかけて、われ、願い、命ずる」

 しかし、いくら待っても悪魔はあらわれなかった。
 なぜだ。どこかで失敗したのか。もしかして、この服がいけなかったのだろうか。実は、黒服がなかったので白いパジャマを着ていたのだ。今夜の白パジャマ。
 しかし、『ソロモンの真の鎖骨』には、服装のことなど書いていない。これが原因ではないようだ。私はもう一度その本をよく読んでみた。‥‥なんということだ。魔法陣が間違っていたのだ。これでは召喚に成功するわけがない。日をあらためて、また試みることにしよう。
 え? どこが間違っていたのかって? 大したことではない。裏返しになっていただけである。ちょっと〜裏向いて〜いただけの魔法陣〜。


第122回へ / 第123回 / 第124回へ

 目次へ戻る