第227回   流行語大賞を考える  1998.12.10





 年末の恒例行事といえば「流行語大賞」の発表である。今年もその季節がやってきた。
 しかし、毎年思うことだが、この流行語大賞で取り上げられる「流行語」というのは本当に流行していたのだろうか? 私が耳にしたことのある言葉など、ほとんどないのだ。今年も知っていたのはわずかに数個である。それとも、単に私が世情に疎いだけのことなのだろうか?
 まあいい。とにかく、今回はそれらの流行語群を俎上にあげる。

 まずは政治関連の流行語だ。
 今年就任した小渕総理は支持率も低く、「もっと流暢にしゃべれる人かと思ったのに語彙があきれるほど少ないじゃないの。これじゃあサギだわ」という理由で「語彙サギ」などという不名誉なニックネームを付けられたりしているのだが、その割には小渕総理に関係した流行語がいくつかある。まあ、こんなところでだけ人気があっても仕方ないという気はするが。
 まず最初はこれ。
「皆様の気体に、固体て液体と思います」
 所信表明演説の一節らしいが、これが流行語になっていたようである。こういうギャグを言えるようなら、決して語彙サギではないと思うのだが。もっとも、このフレーズは盗作くさいな。

 次は、自民党の田中真紀子代議士が総裁選の際に言ったフレーズ、これもノミネートされている。
「誰が総裁になるのかしら? 真紀子わかんな〜い。いや〜ん、まいっちんぐ」
 まいっちんぐ真紀子先生、ということだ。
 ううむ、なんと感想を述べていいものやら。それにしても、この人ほどブリッ子が似合わない人はいないな。どうせなら皇太子妃に言ってほしかったのに。
「お子さまのご予定は?」
「そればかりは、コウノトリが決めることですので。雅子わかんな〜い。いや〜ん、まいっちんぐ」
 まいっちんぐ雅子先生、である。
 ……って、いかんいかん、こういうことを書くから抗議メールが殺到するのだ。自重せねば。

 では、あたりさわりのないところで、テレビ番組からの流行語。
「紅一点がこう言ってん」
 大阪出身の漫才コンビ「トリプル・ドム」が番組で使用したギャグ。もっとも、某団体から「紅一点というのは女性差別ではないか」とクレームが付き、現在は使用されていないらしい。

 CMから生まれた流行語もあった。
「容姿エンクミ」
 エンクミというのは、風邪薬等のCMで人気のアイドル遠藤久美子のニックネーム。このエンクミに似てかわいい女の子のことをこう呼ぶ、らしい。エンクミがかわいいかどうかはよく知らないが、風邪薬のCMといえば昔から小泉今日子に決まっているではないか。けしからん。

 今年はアメリカの火星探査機マーズパスファインダーが火星に着陸する、というニュースもあった。
 この探査機、火星の石を採取したり生命存在の証拠を探索したりといろいろと成果をあげたが、もっとも大きな成果はやはり、火星の人面岩が世界遺産に登録されたことだろう。これ以降人面岩がちょっとしたブームになり、人面岩饅頭や人面岩最中、人面岩ワッフルや人面岩クレープ、人面岩プリクラや人面岩っちなどが続々と発売された。それらの中でも人気だったのが人面赤福餅であり、そのCMソングが流行語大賞にノミネートされている。
「異星の名物〜、赤福餅はえぇじゃないか〜」

 グルメブーム、自然食ブームを反映してか、こんなものもある。
「環境ホルモン」
 ホルモンとはもちろん、ホルモン焼きのことだ。牛の内臓などを使った料理で、これがなかなかうまい。環境ホルモンはこれの改良品で、うまい上に環境にもいいというのだから素晴らしい。是非、一度食べてみたいものだ。

 さっぱり理解できないのが、この流行語である。
「ぷぷぷっ」
 これはいったいどういう意味なのだ。どういう場面で使うのだ。どこで流行ったのだ。さっぱりわからない。責任者、出てこい!

 さて、問題の流行語大賞である。
「いやんいやん」
 よかった、これは私も知っていた。これもCMから生まれた流行語だ。
 今や飛ぶ鳥も逃げる人気のロックバンド「A-SIDE」。そのボーカルの「いっしょう」というミュージシャンがCMで連発していたフレーズである。このいっしょう、黙って立っていればそれなりにかっこいいのに、何を考えたのか体をくねらせて妙な踊りを踊り、「いやんいやん」というフレーズを連発する。この踊りのインパクトが強すぎて、何の商品のCMだったのか未だにわからない。
 昨夜目撃したのだが、このCM、最近になって新しいバージョンが出た。いっしょうが登場するのは同じだが、今度はよりによって落語家の林家木久蔵と共演し、「いやんばかんうふふん、そこはおチチなの〜」などと歌いながら踊りまくっている。大丈夫か、いっしょう。ファンはついてきているのか。ひょっとして、妙なセミナーで洗脳されたりしていないだろうな。あまりにも寒いCMで、見た瞬間体が凍りついた。とにかく寒くてたまらな……って、それはまだ先の話だっちゅーの。
 で、この流行語大賞の賞品だが、どうやらプリン一年分、ということらしい。そうか、プリンのCMだったのか。
 しかし、いくら大好物とはいえプリン一年分とは尋常ではない。いまごろいっしょうは、うれしい悲鳴をあげていることだろう。ぷぷぷっ。
 ええと、「ぷぷぷっ」はこういう使い方でいいのだろうか。それともこうか。
「ぷっぷっぷっ、プ〜リン、プリンの国から来た娘〜」
 プリンセス・プリンプリンのことか。まあ、いっしょうの彼女にはぴったりだな。




第226回へ / 第227回 / 第228回へ

 目次へ戻る