第12回   見ないで 1996.9.26


 え? うるう年ネタって、そんなにポピュラーでした? こりゃちょっと、読者をアマく見すぎたか。夜久さんはともかく、かわちゃんまで知ってるんだもんな<こらこら。
 しかし、この「こらこら」ってのも便利な言葉ですね。これをつけるだけで、「本気で言ってるんじゃないよ〜ん。これはシャレなんだよ〜ん」という、隠れ蓑というか、免罪符になるし。怒ってきた相手には、「シャレのわからん不粋なヤツ」というレッテルを貼ることもできます。
 これから、私も多用しましょう<こらこら<こらこら。(←これは「メタこらこら」。「メタコラの子ら」ではない。←それは「メトセラの子ら」だって。‥‥この程度のダジャレでは、格差3.75倍の違憲状態は解消できんなあ)
 さて、今日のうんちくは、明治43年に木村鷹太郎が提唱した『邪馬台国=エジプト説』について。
 う〜ん、これも、誰でも知っていそうだな。やめましょう。

 というわけで、今日のネタは‥‥ああっ、これも、誰でも知っているかも知れぬ(←疑心暗鬼)。

 大学生時代の話である。
 季節は秋。今と同じような時季だった。
 夕刻。私は、梅田に出るため、阪急石橋駅で急行を待っていた。
 向かいのホームには、折しも、宝塚行きの電車が入って来ようとしていた。
 突然、悲鳴が聞こえる。それと重なるように、電車の急ブレーキの音も。
 一瞬の静寂のあとの喧噪。早くも野次馬達が集まり始めた。
 事故(自殺?)は、ちょうど私の目の前で起きたらしい。線路上に横たわる人影が見える。
 女性のようだ。まだ若い。その躰は、臍の上あたりで両断されていた。切断面からは、大量の血とともに赤黒い内臓が溢れ出し、舗石の上に広がっていく。
 その女性は、まだ生きているようだ。手が動いている。その手は、溢れ出す自分の内臓を掴み、緩慢な動作で躰の中へと押し込んでいる。内臓を元に戻そうというかのように。
 その女性が、か細い声でつぶやいているのを私は聞いた。
 「見ないで‥‥。見ないで‥‥」


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