第55回   男の左手女の右手 1996.11.12


 以前、マレニくんが『書評日記』で、「男女が並んで歩くとき、男が左側に来るのはなぜか」について書いていました。
 で、私も、いろいろと思索をして、この現象を説明する法則をでっち上げ‥‥いやいや、思いつき‥‥いやいや、発見したので、今日はその話をします。

 さて、この法則を説明するには、まず、右脳と左脳の話からはじめなければならない。と書くと、すでにオチが読めた人もいるだろうが、そういう人はすぐに最後まで跳んでいって欲しい。では、オチの読めなかった人向けに説明する。
 大脳生理学などの研究の成果として、脳の右半球と左半球では、その役割に違いがある、ということがわかってきた。それらの研究によると、右脳は情緒、左脳は理性をつかさどる、といわれる。すなわち、右脳は直感力、夢、想像力、エクスタシーなどを担当し、左脳は論理、計算、言語などを担当する、というわけだ。
 そして、ここが肝心なのだが、脳の左右とそれに制御される体の左右は逆転しているのである。つまり、右半身は左脳で制御され、左半身は右脳で制御されている。こんなややこしいことになった理由はわからないが、おそらく進化の悪戯だろう。

 そして、問題の「なぜ男が左側に来るのか?」である。
 男が左側に来る、すなわち、男の右手と女の左手をつなぐ、という形になると、女は左耳で男の声を聞くことになる。すなわち、男の声が情緒をつかさどる右脳で知覚されるわけで、甘いささやきにもうっとりしやすくなる。
 これに対して、男は右耳で女の声を聞く。理性的な左脳で知覚することになり、冷静な判断力を残しながら、女をリードできるのである。(まあ、別に男がリードすることもないと思うが、そこはそれ、法則の整合性上お許しいただきたい)

 悲惨なのが、男が右側に来た場合、すなわち、男の左手と女の右手をつなぐ場合である。
 こうなると、男はより情緒的、女はより理性的になってしまう。すなわち、「舞い上がった男と、それを冷静に見る女」という恐ろしい関係ができあがるのである。

 ‥‥そうか! やっぱりあのとき、私が左側に来ていれば‥‥いやいや、あの、その、まあ、なんですな、いいんじゃないでしょうか、はい。


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