第73回   十八史略 1996.12.4


 『十八史略』は中国の歴史書だ。『史記』以下、十八の史書をダイジェストした初学者用の通史である。決して、フランスの大統領が消えた、という話ではない。それは蒸発シラクである。前大統領の方は大阪で発見されたらしい。みってらん筋である。ローカルなダジャレは禁止。

 『十八史略』は、三皇五帝の時代から始まっている。三皇五帝というのは、実在が確認されている最古の王朝である殷、その前の、伝説と言われている夏、さらにその前の時代の話であるから、すべては伝説である。阪神電鉄ではなく完全伝説だ。ローカルなダジャレは禁止したはず。
 なお、殷と夏については、ペルーに存在していたという説もあるようだが、それは何かの間違いだろう。ペルーにあったのは殷夏帝国ではなくインカ帝国である。

 ちなみに、神話や伝説については、「古い時代とされているものほど新しい」という奇妙な法則がある。
 誰かが面白い話をでっち上げたとしても、時代の新しいところはぎっしりと詰まっていて、そんな話を割り込ませる余地がない。そこで、でっち上げた話は古い時代に持って行く。一番古い時代の前はガラ空きなので、そこへ放り込めばいいのだ。誰が放り込んだかというと、丁稚である。違った。これは丁稚投げた話だ。
 特に中国は、はるか昔から歴史記録がきっちりと残っているので、でっち上げた伝説はずっと昔に追いやられる。こうして、中国四千年の歴史が誕生したのだろうか。黄河の氾濫で多くの人が犠牲になったらしいが、それは中国四千人の溺死である。

 話を元に戻して、参考までに三皇の名をあげておく。伏羲、神農、黄帝である。
 三皇とは誰か、についてはさまざまな説があり、黄帝を否定して女禍だとする説もあるが、私は黄帝を肯定する。これは決して、女禍の「か」は本当は示偏ではなく女偏なのにJIS第2水準にも入ってなかったので怒っている、という理由からではない。公正に判断した結果だ。
 この時代の帝王たちは純粋な人間ではなかった。人頭獣身とか獣頭人身などの姿をしている。たとえば神農は、牛頭人身であったという。また、神農は農耕を人々に教えた、ということになっているが、かなり苦労したらしい。神農は心労がたまったということだ。

 では次は、五帝を紹介しよう。
 ‥‥と思ったが、この五帝の名前も第2水準にさえ入っていない漢字が多いのである。紹介は断念する。断念無念。

 せっかく『十八史略』の話をしようと思ったのに、入口でつまずいてしまった。どうも、今回のネタは紹介するには不適当だったようだ。別の機会に紹介しよう。蒋介石も紹介しよう。おお、蒋介石は一発変換だ。

 では最後に、中国史の中で私が好きな時代を教えよう。それは、宋の時代である。また、元の時代も好きだ。偶然だが、アグネス・チャンも私と同じ意見らしい。むかし、こう歌っていた。「わたしの好きな宋、元」


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