第74回   ミステリーサークル 1996.12.5


 今日はミステリーサークルの話である。
 私は、大学時代に漫画研究会に所属していた。ここは、私も含めて奇人変人の集まりであり、周囲からはよくミステリーサークルと呼ばれていたものだ。
 ‥‥違った。このミステリーサークルの話ではない。だからといって、推理小説研究会の話でもなくて、小麦畑などに一夜にしてあらわれる奇妙な図形、あれのことである。

 ミステリーサークル発祥の地は、イギリスである。1980年代末からあらわれ始め、最初の頃は単に麦が円形になぎ倒されている、といった程度だったのだが、だんだんと複雑化して来て、円・三角形・四角形などの幾何学図形が組み合わさったものや文字のように見えるものなどさまざまな種類が登場した。
 さて、このミステリーサークルはなぜできるのか、という点だが、当然のことながら「宇宙人の仕業」説がある。いたずらにしては数が多く、短時間にあれだけ複雑な図形を描くのは難しい、という根拠だ。しかし、科学者たちは宇宙人の仕業説を否定している。早稲田大学の大槻義彦教授によると、これはプラズマのはたらきによってできるらしい。
 本来ならここで「稲妻」とか「人妻」とか「ぷれつま」とかのダジャレを書くはずなのだが、それはすでにみやちょに使われてしまったので書けない。おそるべし、みやちょ。ダジャレで世界征服でもするつもりだろうか。すなわち、みやちょの征服、というやつである。決して、セーラー服を着たみやちょを思い浮かべてはいけない。それでは、みやちょの制服である。
 ‥‥しまった。他人を罵倒するというのは、私の芸風ではなかった。堪忍してください、みやちょ。罵倒堪忍。

 話を元に戻して、プラズマがどうやってミステリーサークルを作るのか、であるが、大気中で円筒形のプラズマが発生するらしい。そして、その円筒形のプラズマが麦畑の上に落ちてくると麦が倒れる。円筒形がぐるっと一回転すると、麦は円形に倒れるわけだ。そして、円筒形のプラズマが麦畑の上を飛び跳ね、あっちに行ったりこっちに来たりすると複雑な図形もできあがる。
 うーむ、なんだかかなり無理がある説のようだ。これなら、まだ宇宙人の仕業説の方が信憑性があるかもしれない。

 実を言うと、私もミステリーサークルを見たことがある。
 あれは、今年の夏のことだった。駅から会社へと向かう途中、水田のそばを通りかかったとき、稲が倒れているのを見つけたのだ。
 規模は、それほど大きくない。直径3メートルくらいだろうか。形も円ではなく楕円形だった。しかも、倒れ方も中途半端で、周囲の立っている稲との境目もはっきりしない。かなりずさんな作りであるが、やはり宇宙人の作ったものだろう。
 その日の前日には、台風が来ていたのだ。台風の中、わざわざミステリーサークルを作りに来るとは、ずいぶん勤勉な宇宙人である。しかし、やはり風雨のために作業に手間取り、あのような不完全な形になったのだろう。残念なことである。
 今度は是非、天気のいい日を選んで、もっときれいなミステリーサークルを作ってほしいものでだ。
 しかし、新たに稲を倒すのはやめてほしい。稲がもったいないからだ。作るのに失敗した稲を使って、もう一度やるべきだろう。なぜかというと、ミスってリサイクルだからだ。


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