第88回   メリーに捧げるレクイエム 1996.12.21


 メリーが死んだ。

 メリーは、高校以来の友人だ。高校時代からつきあいが続いている友人は、男女合わせて7人程いるが、そのうちの一人である。
 メリーの本名は杉浦芽理(すぎうら・めり)という。しかし私たちは、高校時代から彼女のことをメリーと呼んでいた。
 そのメリーが、本当に突然、死んでしまったのである。まさに、急死で一生を終える、ということだ。

 同じく高校以来の友人の一人からメリーの死を知らせる電話がかかってきたのは、私が就寝中のときだった。訃報は寝て待て、である。
 私は、受話器を握ったまま、しばらく呆然としていた。ついこの前、電話で話をしたときはあんなに元気だったのに。だが、残念ながらメリーの死は事実だった。
 私はその友人にメリーの死因を聞いた。食中毒だという。つまり、食あたりばったり、ということだ。

 そして今日、メリーの葬儀に行ってきたところだ。
 明るくて、誰にでも好かれるメリーの人柄のおかげだろうか、参列者はとても多かった。
 葬儀のプログラムはとどこおりなく進んだ。出棺前にいよいよ最後のお別れ、という場面になり、私たちはメリーの死に顔を見ることができた。生きている頃とほとんど変わらない、きれいな顔だった。気のせいか、微笑んでいるようにも見えた。
 友人たちが、棺桶の中に色々なものを入れた。サフランの花束。戸川純のCD。宮部みゆきの小説。川原泉の漫画。みんな、メリーが好きだったものばかりだ。私も、メリーの好物だったメンマを入れた。死人にしなちく、である。

 霊柩車に乗せられる前、私は棺桶を見た。意外と装飾が多かった。
 花や鳥などが彫刻され、パステルカラーで色が付けられている。さらに、細かいフリルで縁取られていた。いかにもメリーらしい。
 私はそれを見て、こう考えていた。メリーさんのひつぎ、かわいいな。


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