第138回 猫が杓子をかぶるとき 1997.6.3
猫は、われわれ人類にとって、もっとも身近な動物のひとつである。そのためか、われわれの周囲には猫に関連する事物が多い。今日は、そのうちのいくつかを紹介しよう。
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招き猫
商売繁盛の置物である。
右手を上げているものと左手を上げているものがあり、それぞれ「招くもの」が違う。左手は神を、右手は悪魔を招くと言われている。
陶器製のものがほとんどであるが、中にはプラスチック製のものもある。それは、マネキン猫と呼ばれる。
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猫又
猫の妖怪である。十年以上生きた猫が猫又になると言われている。
猫又になると尾先が割れて二股になり、二本足で歩くようになる。さらに、服を着て言葉をしゃべるという。
かなり昔の話だが、猫又が幸福をもたらすと言われ、ブロマイドが爆発的に売れたことがあった。といっても、本物の猫又がそう簡単に見つかるわけもなく、普通の猫に学ランなどを着せて「なめんなよ」などとしゃべらせていたようである。このときの猫のうちの何匹かはまだ生きていて、本物の猫又になっているという。
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猫の手も借りたい
これは、非常に恐ろしい話である。
ある老夫婦は働き者の息子とともに商売をいとなんでいたが、その息子が事故で死んでしまった。働き手を失っても、商売は続けなければならない。しかし、とても息子の働きぶりにはかなわず、非常に忙しかった。
ある日、老夫婦は、隣の住人が「願いをかなえる猫の手」を持っていることを聞き、それを借りてきた。老夫婦は猫の手に「息子を生き返らせてくれ」と願う。すると、真夜中、ドアをノックする音が聞こえ‥‥
あまりに怖すぎて、これ以上話すことはできない。しかし、これ以来、目が回るほど忙しい状態を「猫の手も借りたい」と言うようになった。
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猫の額
これも、非常に恐ろしい話である。
一般的に、人を呪うときにはワラ人形に五寸釘で穴を二つあければいいと言われているが、猫を使った方がさらに効果的である。
草木も眠る丑三つ時、白装束を身にまとって一人で神社へ向かう。そこの神木に猫を釘で打ちつけるのだ。古参のミステリィマニアだと舌に釘を打ちたくなるが、ここはやはり、額に打たなければならない。しかし、これがなかなか難しくて、よく失敗するのだ。目標が狭いからである。
これ以来、土地や建物が狭い様子を「猫の額」と言うようになった。なお、釘を打ったあとの猫は、猫の死体である。
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猫の首
これが、もっとも恐ろしい話である。
あまりに恐ろしすぎて、聞いた人はショック死してしまうほどだ。だから、どんな話なのかは誰も知らない。
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シュレーディンガーの猫
動物学者シュレーディンガーがおこなった実験である。
猫の後足だけに布のカバーを付け、鉄板の上に乗せる。鉄板を下から火で熱し、同時に太鼓を叩く。猫は、前足が熱いので後足だけで立上がり、あたかも踊っているようにもがく。これを何度も繰り返すと、猫は太鼓を叩いただけで踊り出すようになる。これが有名な「条件反射」である。
なお、動物学者マックスウェルが、悪魔を使って同様の実験をおこなったという話もあるが、詳細は明らかにされていない。
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