第330回   りゃくごのご  2001.3.11





 最近、妙な略語を見たり聞いたりすることが多い。どうやら若者たちが勝手に色々な略語を作って喜んでいるようだ。まあ私も、モボやモガ、テレコやテレビ程度の略語ならなんとか理解できるのだが、近頃の略語はどうにもわかりにくい。困ったものである。
 たとえば、掲示板などでよく目にするのが「カキコ」である。どうしてこういう妙な省略をするのか。「クケ」くらい、ちゃんと書きなさい。これでは「アイウエオ」を「アイオ」と略すようなものではないか。「サシスセソ」を「サシソ」と略すようなものではないか。「タチツテト」を「タチト」と略すようなものではないか以下略。困ったものである。
 さらに「メアド」というのもよく目にする。メアドのみやげ、メアド・イン・ジャパン、などという使い方をされるようだが、これも意味不明である。ブラピがブラッド・ピットの略ならメアドはメアリー・ドーキンスの略か。って、誰なんだそれは。それともメアドではなくてミアドの間違いだろうか。後藤久美子がゴクミなら水森亜土はミアドである。しかし木村拓哉はキタクではなくてキムタクだし遠藤久美子はエクミではなくエンクミだなあ。檀ふみもダフミではなくてダンフミだし。などと考えたのだが、結局よくわからない。困ったものである。
 そして「ホムペ」。「ホムちゃん、ぺっ」の略だろうか。って、誰なんだホムちゃん。すると「コピペ」は「コピちゃん、ぺっ」の略かもしれない。って、だから誰なんだコピちゃん。
 そして「モデム」。「モデルルーム」の略だろうか。しかしそれはネットに関係ないぞ。するとやはり、変身して地を駆けるのだろうか。コンピューターに守られた塔に住んでいるらしいから、ネットにも少しは関係あるだろう。
 それから、「テレホ」というのは「ラブホ」の親戚だろうか。テレホタイムは休憩二時間だろうか。それともご宿泊だろうか。午後十一時から午前八時まで繋ぎっぱなしだろうか。そんな体力はないぞ。いやん。
 ネット関係を離れても、略語はいろいろある。「コスプレ」というのは、まあわかりやすい方だ。「こするプレイ」の略である。いったい、どこをこするのだろうか。午後十一時から午前八時までこすりっぱなしだろうか。そんな体力はないぞ。いやん。って、それはもういいって。
 さらに「コクド」というのもある。堤義明が経営するハンバーガーチェーン店だ。「コクド」というのは関西での略語で、関東では「コック」と言うらしい、コクドナルド。ちなみに「びっくりドンキー」も、関西では「びくド」、関東では「びっく」である。
 とまあ、このように略語にも色々ある。古典略語はさすがに古典だけあって洗練されているが、新作略語は玉石混淆でわかりにくいものも多い。その中でも、特に気になるのはやっぱり「カキコ」である。「カキクケコ」の略であることはわかるのだが、なぜこの文脈でこの略語が出てくるのか、さっぱりわからないのだ。いったいどういうことだ。これを考えると夜も眠れない。困ったものである。

 ……え? 「カキコ」は「カキクケコ」の略ではない? 「書き込み」の略だって?
 ううむ、それは盲点だった。しかし、「ミ」くらい無精せずに書けばいいのに。さらに「カキコする」という表現もあるが、これでは「書き込む」より字数が増えているではないか。略語の方が長い、というのは本末転倒だろう。
 だいたい、「書き込み」を「カキコ」と略すことが許されるなら、「駆け込み」は「カケコ」か。カケコ乗車はおやめください。カケコ寺。「炊き込み」は「タキコ」か。タキコご飯。水の江タキコ。「税込み」は「ゼイコ」か。松田ゼイコ。「マスコミ」は「マスコ」か。マスコ直美。そういえば、「コミュニケーション」を間違えて「コミニュケーション」と発音している人はよくいるが、この前会った人は「コュミニケーション」と発音していた。器用な人である。
 まあそれは余談だが、とにかく「カキコ」の謎が解けてよかった。これで今夜はグッスリ眠れそうだ。ちなみに、「グッスリ」は「グッドスリープ」の略である。




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