第337回 あなたの知らない世界遺産 2001.6.17
日曜日の夜、TBS系で『世界遺産』という番組が放送されている。毎週一つずつ世界遺産を紹介している番組だ。
この番組、もうかなり長いこと放送されているのになかなか世界遺産のネタが尽きないなあ、いったい世界遺産っていくつくらいあるのだろう、と思ってユネスコのページを調べてみたら、なんと690もあるらしい。そんなにあるとは思わなかった。これだけあるなら、そう簡単にはネタは尽きないだろう。おまけに、世界遺産は毎年追加登録されて増え続けているし。
しかし、690件もあれば中にはほとんど知られていないマイナーな世界遺産もあるだろう。日本で言うなら、姫路城や白神山地、古都京都の文化財や原爆ドームなどは有名だが、つい最近登録された「琉球王国のグスク及び関連遺産群」などは知らない人も多いだろう。その他、存在さえ知られていない無名の世界遺産や、知ってはいるのだがまさかこれが世界遺産だとは思わなかった、というものも多い。今回は、それらの世界遺産にスポットを当てて紹介していこう。
与那国海底遺跡群(日本、沖縄県)
与那国島近海の海底に眠る石造の遺跡群。テラス、階段、水路、祭祀台などが、縦50メートル、横120メートルの範囲に渡って広がっている。この遺跡を造った文明についてはまったく解っておらず、また「これは単なる自然の造形物だ」との意見も根強いが、反対意見を押し切って文化遺産に登録された。当局は「文化遺産ではないとしても、自然遺産には違いない」との見解を発表している。
端島遺跡群(日本、長崎県)
一般には「軍艦島」と呼ばれる。明治初期に石炭採掘のために開発された島。当初は小さな岩礁だったが、採掘したボタで埋め立てられて拡張され、最盛時には5000人もの人口を収容するアパートが建ち並ぶ過密都市となった。島全体にコンクリートの建物が建ち並び、遠目には軍艦のように見えたことからこのような俗称が付けられた。1974年に閉山され、現在は無人の廃墟となっている。建設当時には最新鋭だった建物が、朽ち果ててツタに覆われていく様子は諸行無常を感じさせ、世界遺産の中でもひときわ異彩を放っている。
太陽の塔(日本、大阪府)
1970年に開催された万国博覧会のシンボルタワーとして建造された。デザインは世界的芸術家の岡本太郎。
万博の施設は開催終了後ほとんど撤去されたが、この太陽の塔はその芸術性が評価され永久保存されることとなった。自然にあふれた万国博記念公園の中にそそり立つその姿は感動的で、まさに世界遺産にふさわしい逸品である。
雪男と岩穴住居群(インド・ネパール)
ヒマラヤ山脈の奥地で発見された岩穴住居群。同時に、その住居群に生息する雪男数十個体も発見されて即座に世界遺産に登録された。
雪男については、ギガントピテクスの子孫という説が有力であるがその遺伝的位置はまだ特定されていない。この雪男を「人間」と扱うべきか「動物」と扱うべきか、生物学者、法律学者、歴史学者、さらには人権保護団体も参加して論争が続いている。最近は「雪男の子供を産んだ」という女性や「雪男に誘拐されて体内に金属片を埋め込まれた」という男性、「ヒバゴンは雪男の亜種だ」「ヒマラヤにキリストの墓がある」「邪馬台国はヒマラヤにあった」と主張する学者まで現れて、論争は泥沼化している。
柳京ホテル(朝鮮民主主義人民共和国、平壌)
平壌にある巨大ホテル。完成すれば150階建てという世界有数の高さを誇るホテルになるはずだったが、建設途中のまま放置されている。未完成とは言えその姿は観光客には大人気で、スペインのサグラダ・ファミリア大聖堂とどちらが先に完成するかは賭けの対象にまでなっている。
この柳京ホテルは、北朝鮮初の世界遺産として登録されたが、北朝鮮当局はこれに難色を示しており、代わって「故金日成主席の生家」を登録するよう申請中である。
空飛ぶ円盤墜落現場(アメリカ、ニューメキシコ州ロズウェル)
1947年に異星人の乗る宇宙船が墜落した現場。現在はその墜落現場を訪れても当時を彷彿とさせる物は何も残っていないが、近くの「空飛ぶ円盤博物館」には宇宙船の破片、墜落時の写真、異星人の死体の剥製や解剖ビデオなど数々の証拠物件が残されている。土産物も多数売られており、一年中観光客でにぎわう有名な世界遺産である。
なお、アメリカ政府は、「気象観測用気球が墜落したものだ」との公式見解を発表し、世界遺産への登録を認めていない。
人面岩(火星、エリシウム)
地球外では初めて登録された世界遺産。火星の表面に刻まれた巨大な人の顔の形をした岩であり、1976年にバイキング2号によって発見された。火星文明の遺跡だとの説が有力だが、与那国海底遺跡と同じく、人工物か自然物かの論争には今なお決着はついていない。
なお、この人面岩は、遺跡保護のために現在では立ち入りが禁止されている。
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