第346回   ヘソの下に潜む真実  2002.3.10





 題名は忘れてしまったが、昔読んだかんべむさしのエッセイに、ある替え歌が紹介されていた。
 童謡「浦島太郎」の替え歌なのだが、非常に単純である。七五調のこの歌の、五の部分をすべて「ヘソの下」に変えるだけだ。非常に単純なのだが、これが妙に面白く、友人たちと歌い合っては馬鹿笑いしていた、という。
 こんな歌である。

昔々ヘソの下
助けた亀のヘソの下
竜宮城のヘソの下
絵にも描けないヘソの下

乙姫様のヘソの下
タイやヒラメのヘソの下
ただ珍しくヘソの下
月日のたつのもヘソの下

遊びに飽きたヘソの下
お暇乞いのヘソの下
帰る途中のヘソの下
みやげにもらったヘソの下

帰ってみればヘソの下
元居た家もヘソの下
道に行きあうヘソの下
顔も知らないヘソの下

心細さにヘソの下
開けて悔しきヘソの下
中からぱっとヘソの下
たちまち太郎はヘソの下

 確かにこれはけっこう面白い。まあ、フルコーラス書くほどのものではないかもしれないが。
 しかし、「浦島太郎」がこれだけ面白いのなら、他の童謡でも面白いものがあるかもしれない。かんべむさしが紹介していたのは「浦島太郎」だけなので、ちょっと他の童謡でやってみよう。たとえば、「桃太郎」ではどうか。

桃太郎さんヘソの下
お腰に付けたヘソの下
ひとつ私のヘソの下

 ううむ、これは今ひとつか。では、「金太郎」ではどうだろう。

まさかりかついだヘソの下
熊にまたがりヘソの下の稽古

 やはり熊を相手に稽古するのか。では、「あかとんぼ」ならどうだろう。

十五の姉やのヘソの下
お里の便りもヘソの下

 姉やのヘソの下はなかなかいいかも。では次は、「ひなまつり」。

灯りをつけましょヘソの下
お花をあげましょヘソの下
五人囃子のヘソの下
今日は楽しいヘソの下

 ううむ、ろうそくをつけたり花を挿したり、なんだかSMプレイのようで楽しそうだ。「犬のおまわりさん」ならどうか。

迷子の迷子の子猫ちゃん
あなたのヘソの下はどこですか

 いかん、これでは幼女趣味の変態警官ではないか。それでは、「赤い靴」ではどうだろう。

ヘソの下出してた女の子
異人さんに入れられていっちゃった

 ……って、なんだかだんだん当初の目的からずれてきたような気がするぞ。
 ちょっと童謡から離れてみよう。アニメの主題歌はどうだろうか。まずは「サザエさん」。

お魚くわえたドラ猫のヘソの下
裸足でかけてく陽気なヘソの下
みんながヘソの下お日さまもヘソの下
ルルルルルル今日もヘソの下

 また猫のヘソの下か。まあいいけど。では次は、「踊るポンポコリン」。

いつだって忘れない
エジソンのヘソの下

 ううむ、忘れたいなあそんなもの。ならば「一休さん」ではどうか。

好き好き好き好き好き好きヘソの下

 って、そんなストレートな。では「バビル2世」ならどうだろう。

コンピューターのヘソの下
バベルの塔のヘソの下
超能力少年ヘソの下
地球の平和をヘソの下
三つのしもべのヘソの下
怪鳥ロプロスヘソの下
ポセイドンはヘソの下
ロデム変身ヘソの下

 そしてバビル2世は毎晩、変身したロデムを相手に……。
 ならば次は「キャンディキャンディ」で。

ヘソの下なんて気にしないわ
ヘソの下だってだってだってお気に入り
ヘソの下ヘソの上大好きヘソの中ヘソの裏大好き
わたしはわたしはわたしはヘソの下

 アニメ主題歌はこれくらいにしておいて、歌謡曲に行こう。イルカの「なごり雪」ならどうなるか。

汽車を待つ君の横で僕はヘソの下を気にしてる
季節はずれのヘソの下が降ってる
東京で見るヘソの下はこれが最後ねと
さびしそうに君がつぶやく

 これは語呂が今ひとつか。では、ピンクレディーの「UFO」で。

ヘソの下合わせて見つめるだけで
愛し合える話もできる
口づけするよりヘソの下
ささやき聞くよりヘソの下
私の心をゆさぶるヘソの下
もの言わずにヘソの下だけで
すぐあなたにわかってしまう
飲みたくなったらヘソの下
眠たくなったらヘソの下
次から次へと差し出すヘソの下
信じられないヘソの下あるの
もしかしたらもしかしたらヘソの下かしら
それでもいいわ近ごろ少し
地球のヘソの下に飽きたところよ

 ううむ、やはり宇宙のヘソの下の方がいいのだろうか。
 このように、ヘソの下替え歌はあらゆる歌に応用できるのだ。身近な歌で試みてもらいたい。
 そして最後はやはり、阪神タイガース応援歌「六甲おろし」で締めるとしよう。

六甲おろしのヘソの下
蒼天翔けるヘソの下
青春の覇気ヘソの下
輝く我が名ぞヘソの下
オウオウオウオウ下半身タイガース
振れ振れ振れ振れ




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