第19回   不幸な最終回 1996.10.3


 うーむ。なんだか知りませんが、昨日は好評だったようなので、もうしばらく『うんちくん通信』で行くことにしましょう(←無節操)。
 まあ、受けなくなってきたらまた変えればいい、ということで。受けるネタは何度でも使う、というのが大阪人の心意気です。(などと言ってたら、今日いきなり受けなくなったりして)

 ということで、今日のネタはこれ。

 『サザエさん』や『ドラえもん』などの国民的人気アニメには、「不幸な最終回」の噂がつきまとっている。
 主に子供たちの間で、口コミで伝えられているものだが、たとえば『サザエさん』については以下のようなものがある。

 カツオは素行不良で少年院入り。ワカメは売春で逮捕。波平は心筋梗塞で死亡。フネは不倫。タラちゃんは交通事故死。マスオはノイローゼで自殺。そして、サザエはキッチンドリンカーに。

 波平がボケ老人になり、磯野家はお先真っ暗。マスオはよそに愛人を作り、サザエはヒステリー状態で、お魚くわえたドラ猫を金属バットで殴り殺し、カツオはそんな家に嫌気がさしてシャブ中、ワカメは売春婦に。

 一方、作者の死去にともない、実際に近いうちに最終回を迎えるであろうドラえもんについては、以下のような噂があった。

 主人公ののび太は実は植物人間であり、『ドラえもん』の物語はすべてのび太の夢だった、というもの。(余談だが、『ハイスクール!奇面組』の最終回は、これに近いものだった)
 この話には裏があり、のび太には実在のモデルがいるという。群馬県に住む34才の植物人間の青年で、作者の藤子・F・不二雄は、彼の漏らす譫言を元に物語を作っていた。しかし、この青年が死亡し、もはや物語を続けられなくなった‥‥。

 あくまでこれらは「都市伝説」であり、「不幸」をよりリアルな物語の結末として選び取らざるを得ない現代人の病理なのかも知れない。しかし、この「都市伝説」関連については後日語るとして、この「噂のパターン」を見てみよう。

 『サザエさん』と『ドラえもん』の噂のパターンには、大きな違いがある。『サザエさん』の方は、あくまでも「物語としての最終回」を語っているのに対し、『ドラえもん』の方は、「作者が描けなくなった理由」が主であり、最終回の内容自体はそれに付随したものだ、という点である。
 この差はどこから来るのか。やはり、「物語の質の差」だろう。
 要するに、『サザエさん』というのは、誰にでも作れる物語である。もともと原作が4コマ漫画であり、それをTVアニメ化するには脚本家による大幅な編集、およびオリジナルストーリーの追加が必要である。TV化された時点から、すでに原作とは別物になっており、したがって、「最終回の内容」も、アニメのストーリーの中に求めざるを得ない。
 これに対し、『ドラえもん』は、原作に忠実にアニメ化されている。映画版も、まず作者の長編漫画があり、そこから作られる。すなわち、『ドラえもん』は、藤子・F・不二雄にしか描けないのだ。だとすれば、「最終回」の迎え方としては、「作者が描けなくなった理由」を使えばインパクトがあるだろう‥‥。

 長期にわたって人気を得ているアニメとしては、他に『ちびまる子ちゃん』『セーラームーン』がある。この2つのアニメの「不幸な最終回」の噂は、残念ながら聞いたことがない。しかし、予想するに、『ちびまる子ちゃん』が『ドラえもん』パターン、『セーラームーン』が『サザエさん』パターンなのではないだろうか。


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