第37回   笠原弘子 1996.10.24


 ううっ、本日、ついに誕生日をむかえてしまいました。この年になると、誕生日など、嬉しくありません。だから、お祝いのメールは不要です。(←言わなくても、誰も送ってこないって。←いや、かえって嫌がらせのメールを送ってくるヤカラが何人かいそう。←結局、送って欲しいのか?)
 で、誕生日記念(どこが)で、今日のネタはマニアックに笠原弘子。

 笠原弘子は、歌手である。一応、アイドルの傍流に位置しているようだが、ヒット曲と呼べるようなものはないので、ほとんどの人は知らないであろう。でも、私は笠原弘子のファンなのだ。
 代表作は、と言えば、OAV版『機動警察パトレイバー』の主題歌『未来派Lovers』(誰も知らんて)とか、『不思議の国のスイートミント』の主題歌『不思議の国のスイートミント』(さらに誰も知らんて)とか‥‥いや、別に、アニメの主題歌ばかり歌っているわけではなくて、普通のアルバムも10枚ほど出しているのだ。だから、それなりには売れているのだろう。結構キャリアは長い。
 そのアルバムの中で、私がもっとも気に入っているのが、作詞作曲・松宮恭子の4枚、『Cafe Paradise』『L'express "Fantaisie"』『MADRIGAL』『Saga』である。
 なぜ、この4枚が気に入っているのか? それは、多分、「意表を突いている」からだろう。一応、ほとんどがラブソングなのだが、まともなラブソングはない。それぞれ、一ひねりも二ひねりもしてあるのだ。SFあり、ホラーあり、精神分析あり、古代史あり、生物学あり、アラビアあり、イスラムあり‥‥うーん、こう書いても、何のことやらわからんな。
 それぞれの曲の中で、私の「琴線に触れた」フレーズを紹介しよう。(こういうのって、どこまでが「正当な範囲の引用」になるのだろうか? とりあえず1フレーズだけなら大丈夫だろう。マズかったら言ってください)

 あなたは 気持ちがいい だけど 一人も捨てがたい(日曜日のパラドクス) ←これはやはり、アレか?
 オアシスの幻が 幾度も惑わせる 生命潤す水は あなた一人なのに(駱駝が眠らない) ←この曲、歌詞にアラビア語が入ってる。いまだに意味がわからんぞ!
 自由と ひきかえにした ぬくもり(鳩のように) ←わかる、それ。
 冥王星より ずっと 孤独(冥王星よりも孤独) ←孤独の比喩に冥王星を持ってくるとは。
 だめよ 七色の 夢を見た だから 許して 溺れさせて(Pillow Talk) ←現実逃避である。
 地球はメリーゴーランド 太古の海原で 寝返りをうってる アンモナイトが見ている夢かも(地球はメリーゴーランド) ←これは「胡蝶の夢」か?
 ああ あなたと彼との カルマが消えるまでは くり返す 何度もまた 傷つけあうために(空に投げた林檎) ←カルマだったのか。
 ユング派の分析は 情け容赦なくて 埋もれた欲望を さらけ出す(水の夢) ←ここでユングを出すか?
 はるかな星 孤独なエンジニア 不時着して 五年が過ぎた(オリオンM42星雲のほとりから) ←もろ、SFである。

 ‥‥なんだか、「琴線に触れた」というより、ツッコんでるだけのような気もするなあ。ま、いいか。

 どうも1フレーズだけでは、笠原弘子の魅力はわかりにくい。そこで、もっとも気に入っている曲『目覚めすぎた妄想の囚人』を1コーラス紹介しよう。
 しかし、歌詞すべてを引用してはさすがにまずいだろう。そういうときは、漫画家・小林じんこが、『風呂上がりの夜空に』の中で編み出したテクニックを使えばいいのだ。
 たとえば、『いとしのエリー』なら、こうなる。

 泣かした子 友ある 爪 託しても 名 尾
 世 理想 木 餅があれば 飯野 差

 これなら、まったく問題なし。

『目覚めすぎた妄想の囚人』

 食う僧の 濃い 微 戸には 納戸も 駄 枯れている
 誓い 味蕾の 弦 実 全 背の 毛 意見
 波津城 木は 未 自覚 手 まだ 臭気 敵じゃない
 注に 魔 酔う 仁美は 甥駆けても 無だ
 荒 編むが 成ってる ミス 戸の 無効で
 目 鮫 杉田 孟宋の 集塵
 憂い 他 芦で ポリ エス 照るの 名球を ある区

 ‥‥しまった。
 『いとしのエリー』なら、誰でも知っているから元の歌詞も想像つくが、これでは何のことやらまったくわからんではないか。
 元の歌詞を知りたい人は、是非、CDを買ってください。


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