第49回   血液型占いとレッテル貼り 1996.11.6


「あれ? お前、星占いの本なんか読んでるのか?」
「うん、ちょっと運勢を調べようと思って」
「お前、占いなんて信じないって言ってただろ?」
「‥‥でも、信じてなくても当たるって言うし」

 おお、今日のマクラはちゃんとマクラになっているっ。
 というわけで今日は、血液型占いの話。

 血液型は普通ABO式の四種類だと思われ、「血液型占い(血液型人間学とか血液型性格判断とかいう呼び名もあるが、私は学問とは認めていないので占いと呼ぶ)」でもこの四種類が基本になっているようだが、実際にはe式・s式・q式・Rh式など三十種類以上もあり、すべての血液型が完全に一致する割合は九四三億分の一以下だと言われている。つまり、自分と同じ血液型の人はいないと言っていいのだ。
 このABO式の血液型が発見されたのはそう古いことではない。1901年に、オーストリアのラントシュタイナーが発見したものである。

 そして、この発見はすぐさま政治的に利用された。
 「黄禍論」が台頭していたヨーロッパで、ヨーロッパ人種の方がアジア人種よりも優秀であることの証明として使われたのだ。ヨーロッパ人種とアジア人種の血液型を調べてみると、ヨーロッパ人種の方がA型の割合が多いことがわかる。そこで、「高等」とされるチンパンジーにはA型が認められ、「下等」とされるブタはB型である、といった情報まで持ち出してきて「ヨーロッパ人種はアジア人種よりも高等だ」という理論を作り上げたわけだ。

 日本で最初に「血液型占い」が使用されたのは軍においてである。第一次大戦後、士気の低下に悩んでいた陸軍は、血液型で軍人としての適性を見分けられないかという研究を軍医に命じた。その結果は、ヨーロッパとは異なり、B型が優秀である、という結論になった。
 その後、古川竹二という学者が『血液型と気質』という本を出し、「A型とAB型は消極的」「B型とO型は積極的」などと、血液型による性格を分類し、職業や結婚相手の選択において血液型を気にする、という風潮を作った。

 現在では、もちろん、血液型と性格に関連があるなどということは、科学的にはまったく根拠のないことが知られているはずなのに、「血液型は性格に影響を与える」と信じている人が少なくない。まあ、恋占いなどで楽しんでいるうちはまだいいのだが、保育園のクラス分けに血液型が使われたり、企業の人事政策で採用したり、といった話になるとちょっと問題があるだろう。

 問題というのは、「レッテル貼り」の問題のことである。
 血液型と性格の間に関係がある、と信じている人間は差別意識が強い傾向にあるのではないか。なぜなら、その人間の中身を見ずに、その人間に貼られているレッテルでその性格を決めつける思考法が、「朝鮮人だから○○」「黒人だから○○」「女のくせに○○」というような決めつけに通じているからである。
 このような「レッテル貼り」の考え方は危ない。知らず知らずのうちに、人に差別意識を植え付けているかもしれないのだ。

 だから、血液型占いなど信じてはいけない。そのようなものを信じるのは、全員、差別主義者である。
 (‥‥しまった、これも「レッテル貼り」だ)


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