第118回   オロチ 1997.2.27


 大阪は千里丘陵の万博記念公園には、エキスポランドという遊園地がある。そしてそこには、オロチ(OROCHI)というジェットコースターがあるのだ。
 ご存じだろうが、オロチとは大蛇のことである。昔から日本各地にはヤマタノオロチをはじめ大蛇の伝説が数多くある。特に有名なのは、六甲山に棲む大蛇だ。六甲オロチである。

 その日、私はある女性とオロチに乗りに行った。本人の希望により名前を明かすことはできないので、仮にA子としておこう。
 それがそもそも間違いだった。実は、A子も私もジェットコースターには弱かったのだ。おまけにオロチはインバーテッドコースターとかいうやつで、足の下に何もない。宙返りなどすると、本当に何がなんだかわからなくなり、楽しむ余裕などなかった。
 拷問にも思える時間が終わってオロチを降りたとき、私は完全に酔っていた。吐き気もする。吐き気、酔い、残った、というやつだ。
 しかし、A子の方はさらに悲惨だった。どうやら、小便を漏らしてしまったらしい。‥‥いや、ここはやはり可憐に、聖水とでも言っておくか。A子聖水、である。
 こういうジェットコースターのそばには、失禁した人のための下着が売っているのが常である。私はA子のために、パンティを買ってくることにした。その売店にはいろいろな種類のパンティがあり、どれを買おうか迷ってしまうほどだ。ぼんやりとながめていると、エコマーク付きのパンティが目についた。エコマーク? パンティにエコマークとは珍しい。
「すいません、このパンティにエコマークが付いているのはなぜですか?」
「ああ、そのパンティは、股間の部分が特別に柔らかい生地で作ってあるんですよ」
 ‥‥なるほど、恥丘にやさしい、ということか。


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