「はい、こちら建築110番です」
「聞いてください! 大ショックなんです!」
「はいはい、なんでしょう?」
「あんなに頑張って3度も塗った床ニスが、不良品だったと判明したんです! 苦労がすべて水の泡です! どうすればいいでしょうか?」
「それはもう、どうしようもないですねえ」
「そんなこと言わずに、なんとかしてください!」
「そう言われても、どうしようもないものはどうしようもないんであって‥‥」
「とにかく、なんとかしてください」
「やめましょう、ニス掛け論は」
「‥‥‥‥」
「えーと、お宅の家族構成はどうなっています?」
「はい、夫と、子供が一人います」
「だったら、ニスは塗らない方がよかったですね。親子三人ニスいらず」
「きーーーーっ! 怒りますよ!」
「まあまあ、ニスに流してください」
「はい、こちら建築110番です」
「聞いてください! 大ショックなんです!」
「はいはい、なんでしょう?」
「ついうっかりして、玄関を鬼門に作ってしまったんです! どうすればいいでしょうか?」
「それはもう、どうしようもないですねえ。ポールシフトで極が逆転するのを待ってください」
「はい、こちら建築110番です」
「聞いてください! 大ショックなんです!」
「はいはい、なんでしょう?」
「となりの空き地に囲いができたんです! どうすればいいでしょうか?」
「その囲いは、かっこいい囲いですか? かっこわるい囲いですか?」
「うーん、どちらかといえばかっこわるい囲いですねえ。あちこち穴があいてますし」
「なるほど。その穴は、格好のカッコウの巣になりそうですね」
「そうなんですよ。なんだか、目つきの悪いカッコウが何羽か住みついて、悪事の相談をしているようなんですが」
「なるほど。カッコウだけに、タクランでますねえ」
「はい、こちら建築110番です」
「聞いてください! 大ショックなんです!」
「はいはい、なんでしょう?」
「隣の人が庭に植えたカラシレンコンが、うちの庭に生えてきたんです! どうすればいいでしょうか?」
「ああ、それは、かまわないから切っちゃってください。自分の土地に生えてきたものですから。醤油をかけて食べるとうまいですよ」
「そうですか、わかりました! で、醤油はどれくらいかければいいでしょうか?」
「ほんの少しでいいです。レンコン一滴」
「はい、こちら建築110番です」
「聞いてください! 大ショックなんです!」
「はいはい、なんでしょう?」
「隣のカキの木の枝が、うちの庭の方にはみ出しているんです! どうすればいいでしょうか?」
「ああ、それは、かまわないから切っちゃってください。醤油をかけなくてもうまいですよ」
「でも、実はなってないんですけど。隣の客が全部食べちゃいました」
「じゃあ、八百屋で買ってくるしかないですねえ。あ、買うときはキャッシュですよ。カキ現金」
「はい、こちら建築110番です」
「聞いてください! 大ショックなんです!」
「はいはい、なんでしょう?」
「隣のガキが、塀の上から顔を出してうちの庭をのぞくんです! どうすればいいでしょうか?」
「ああ、それは、かまわないから‥‥」