第293回 アンケート結果発表 1999.12.30
というわけで、アンケート結果の発表であります。
昨今の流行に乗り遅れまいと、がらにもなく『面白かった回の人気投票』などを始めてしまったものの、ホントに投票してくれる人がいるのかとても不安でした。しかし幸い、面白かった回など一回もなかったぞこらとかすべて面白くて順番など付けられませんなどという意見もなく、年末の忙しい時期、投票期間も短かったにもかかわらず実にのべ五十六億七千万人もの人から投票をいただきました。ありがとうございます。
お礼の意味も込めて、ここで結果を発表するとともに私のコメントやいいわけや自己弁護や自己正当化や自己批判などをつらつらと書かせていただきます。まあ、今年一年のしめくくりということで、こんな回もあっていいかなと。あ、これは決して自己正当化ではありませぬ。
さて、集計の方法ですが、「面白かったものを5つ選んでください」という形でアンケートをおこなったので、5つ選んでくださった方の票についてはそれぞれ1点としました。そういう方が大部分だったのですが、中にはそれをイヤがって「オレはそんなルールには縛られないぜ」とか「ああん私は7って数字が好きなのよお」とか「祖父の遺言で」とかいう理由で4つ以下しか選ばなかった方や6つ以上も選んだ方もいましたが、そういうのは誤差として涙を飲んで割愛することにしました。イヤよイヤよも誤差のうちということで、ご寛恕願います。
それでは、集計結果を十位から発表していきましょう。
第十位 『死語との仕事』 534524点
まさかこれが十位に食い込んでくるとは思いませんでした。死語のみを使って雑文を書いてみようという無謀な試み、とても苦労した割には地味な作品になってしまったなあ、と思っていたのですが、その苦労の部分が評価されたのでしょうか。ううむ、苦労を読者に見せるようでは私もまだまだ未熟者です。
ところで、考えてみれば「豚もおだてりゃ木に登る」ってのは死語じゃないですよねえ。これはもうすでに「ことわざ」として定着していると言ってもいいのではないでしょうか。
第九位 『クリスマスプレゼント』 777777点
ううっ、なんだこれは。いったい誰が書いたんだ。私か。まさかこんな大甘のラブストーリーを書くとは。困ったものです。
言っておきますが、これはフィクションです。誰が何と言おうとフィクションです。プレゼントに女性用下着を買いに行くなんて、ううっ、思い出しても赤面……あっいやいや、思っただけでも赤面します。
第八位 『初級日記書き講座』 1025670点
これは書くのにかなり時間がかかりました。日記の内容は同じなのに、文体だけが「どうしようもなく下手くそなもの」から「普通の文章」になり「洗練された名文」になり最後には因果地平の彼方へぶっ飛んで行ってしまうというこの作品、『アルジャーノンに花束を』からアイデアを得たものかとの指摘を何人かからいただきましたが、実はそうではなくて、『危険な文章講座』(山崎浩一、ちくま新書)からなんですよね。
しかし、「洗練された名文」ってのはなかなか書こうと思っても書けるもんじゃありません。なんだか谷崎潤一郎の文体模写みたいになってしまって。いや、もちろんワザとやっているわけですが。どうしようもなく下手くそなものとか因果地平の彼方へぶっ飛んだものとかは得意なのですがねえ。
第七位 『開かずの間研究会』 1957645点
きみのハートの開かずの間は、いつか必ずオレが開けてみせるさっ!
第六位 『あとがき』 2000072点
えっと、あとがきです。
架空の本のあとがきという設定でパロディ化したものです。ううむしかし、私はこういうパターンが好きですねえ。最初は普通のあとがき風に自作解説などをやっているのですが、だんだん壊れて無茶苦茶になっていくというのも常套手段だし。
どうやらこの本、推理小説の短編集のようですが、それにしても作者の幣原幣彦っていったいどういう人なのでしょう。
第五位 『ファンタが大将』 2761113点
いやホントに、あれだけさまざまな種類があったファンタたちは、いったいどこへ行ってしまったのでしょう。今では数種類しか見かけることはありません。けっこう美味しそうなものからとても飲む気にはなれないものまで山ほど登場したあの時代は、カンブリア大爆発みたいなものだったのでしょうか。
ああ、それにしても、ファンタゴールデンアップルをもう一度飲みたいものです。
第四位 『あなたにもフキダラソウモンが飼える』 3105022点
ときおり私の雑文に登場する謎の生物フキダラソウモン、ほとんどは名前だけの登場でその実態はあきらかになっていなかったのですが、そのフキダラソウモンの飼い方を、よくあるハウツー本「ペットの飼い方」風にまとめたものです。ところどころに横山えいじの『宇宙大雑貨』ネタが入っているのは、まあご愛敬ということで。
しかし、これを読んでもフキダラソウモンの実態はいっこうにあきらかにならないのです。ううむ。
第三位 『オンドルは飛んでいく』 4423119点
まずタイトルだけが浮かんだ作品。展開や結末など何も考えずにとりあえず書いていったら、なんだかわけのわからないものになりました。って、それはいつもそうかも。
それはともかく、「天災は忘れたコロニーやってくる」とダジャレはちょっと説明不足でした。これは『機動戦士ガンダム』の、一週間戦争のコロニー落としのことを言っているのですが、ううむ、この戦争を知らない世代がどんどん増えてきているようです。まったく、近頃の若い者は。
しかし、そもそもあれは天災じゃなくて人災だよなあ。
第二位 『ダジャレ探偵対コジャレ探偵』 6034721点
このトリックは我ながらよくできたと思っています。おそらく、「普通の推理小説」としても通用するのではないかと。まあ、それをまともな推理ではなくてダジャレで解決してしまうところがダジャレ探偵のダジャレ探偵たるゆえんなんですが。
しかし、ライバルとして登場させたコジャレ探偵にけっこう人気があったのが意外でした。「ヤなヤツ」として書いたのですがねえ。これだけ人気があるなら、そのうち再登場させるかもしれませんのう。ええ、拙僧はその辺節操がないのですじゃよ。
第一位 『アンケート結果発表』 9976542点
ううっ、これが一位です。いったいどうしたんでしょう。この回は別にネタでも何でもなく、ただアンケート結果の発表をしているだけなのですが。普段書いているものよりこっちの方が面白いのでしょうか。ちょっとメタ雑文(って何だ?)ぽい風味が入っているところがウケたのでしょうか。しかしこれは邪道だよなあ、やっぱり。
でもまあ、結果は結果として真摯に受け止めねばなりません。投票してくださった方々、どうもありがとうございました。
というわけで、今年はこれでおしまいです。また来年、お会いしましょう。
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