第352回   犬も歩けば棒も歩く  2003.1.5





「はいどうも、セメダインズです」
「みなさま、あけましておめでとうございます」
「おめでとうって、きみ、もう今日は1月5日やないか」
「仕方ないでしょう、今日がわれわれの初仕事なんですから。そして今日がわれわれ、去年の正月以来、一年ぶりの仕事でございます」
「こらこらっ、何を言うてんねん。……って、そのネタ去年の正月にもやったぞ」
「そんなもん、わざわざ言わんかったら誰も覚えてませんて」
「そんなことないやろ」
「いえいえ、コンビ名さえ覚えられてないのに、どんなネタやったかなんて覚えられてるわけがない」
「それもそうやな。って、こら!」
「まあそれはそれとして、僕ねえ、最近犬を飼い始めたんですわ」
「ほう、頭が三つある犬とか」
「そうそう、地獄の番犬ケルベロス! 番犬としては頼りになるんやけど、エサ代が三倍かかるのが玉にきずでして……って、違いますがな。正月早々、こんなマニアックなネタやってどうするんですか。普通の犬ですわ普通の」
「なんや、普通の犬か。てっきり、キングギドラが進化した犬かと」
「なんでキングギドラが犬に進化するんですか。逆ならともかく」
「……えっ?」
「まあそれはともかくとして、この犬が、すごく頭がいいんです」
「ほう、三つの頭のうち、どれが頭がええんや?」
「左側の頭です。右側の頭は、ちょっとアホでねえ。って、違うやろ。いいかげんケルベロスから離れなさい」
「で、どんな風に頭がええんやって?」
「算数ができるんですわ、算数」
「ほう、どんな計算が?」
「『2ひく1は?』『ワン』とか、『14ひく13は?』『ワン』とか」
「ほほう、それは頭がええなあ。ひょっとして飼い主より頭がええんとちゃうか」
「そうそう、僕は二桁の引き算になるとちょっとアヤしい……って、なんでやねん」
「でも、算数ができる犬か。それは珍しいなあ」
「いや、それがそうでもないんですわ。世間には、算数ができる犬なんて、犬の数ほどいるんですわ」
「……ま、まあ、犬の数やなあ」
「算数ができるくらいやったら自慢になりません。そこで僕は、もっと難しい計算をさせることにしました」
「ほう」
「『x2-1=0の正の解は?』『ワン』。ほらどうです。算数犬じゃなくて数学犬ですよ」
「なるほど、数学犬か。そりゃ珍しい」
「いや、ところが、これもまたそうでもないんですわ。世間には、数学ができる犬なんて、猫の数ほどいるんですわ」
「なんや、今度は猫かい」
「そこで僕は考えました。数学犬なんてありふれている。ここはひとつ、他の教科をやらせようって」
「他の教科って何や?」
「英語です、英語」
「英語ねえ……まあだいたい先は読めるけど、続けてください」
「ではお言葉に甘えて。『1を英語で何というか?』『one』。『( )の中に当てはまる単語を答えよ。I ( ) speak English.』『can』。どうです、この頭の良さ」
「なるほど英語犬か。そりゃ珍しい」
「いや、ところが、これもまたそうでもないんですわ。世間には、英語ができる犬なんて、ケルベロスの数ほどいるんですわ」
「ケルベロスは少ないんとちゃうか?」
「そこで僕は考えました。英語犬なんてありふれている、ここはひとつ、他の教科をやらせようって」
「他の教科ってなんや?」
「地理です、地理」
「地理? それはちょっと読めんなあ」
「こんな問題です。『海面が陸地に入り込み、外海に向かって開いている地形を何というか?』『湾』。どうです、この頭のよさ」
「ううむ、ええというか何というか……」
「しかし、まだこれでも不十分です。うちの犬には、家庭科も教えました」
「家庭科?」
「はい。『飲食物を盛るための木製の器を何というか?』『椀』。どうです、この頭のよさ」
「……それ、家庭科か?」
「まあとにかく、このように、うちの犬はとっても頭がいいんですわ。きみも見習いなさい」
「……って、犬を見習ってどないすんねん」
「家庭教師にいかがですか。今ならお安くなってます。三日分の食事で、三年間お教えします」
「ほう、さすがは犬やなあ。って、なんでやねん」
「猫を家庭教師に雇うよりは、ずっとお得ですよ」
「そりゃまあそうかもしれんけど。っと、そうや、聞き忘れとったわ。きみとこの犬、名前はなんていうねん」
「名前ですか? ミケです」
「ミケ? そりゃ猫の名前と違うんか」
「僕の一族では昔から、犬の名前はミケと決まってまして」
「どんな一族やねん」
「ゴム製の白いマスクかぶった人がいる一族ですわ」
「だから、そりゃどんな一族やねん」
「沼の中に逆立ちして両足突き出している人がいる一族ですわ」
「だから、どんな一族やねんって」
「そりゃもちろん、犬がミケの一族、ですがな」
「……そのギャグは前にも使ったんとちゃうか?」
「そんなもん、わざわざ言わんかったら誰も覚えてませんて」
「またそれかい。もうええわ」
「はい、そろそろおあとがよろしいようで」
「どうも、セメダインズでした」
「みなさま、また来年お会いしましょう」
「それを言うなって!」




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